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施工方法

浸透施設の浸透能力は設置場所の土質構造に依存する。従って、浸透施設の施工にあたっては、浸透能力が損なわれないように十分配慮する事が重要である。
具体的な施工手順と施工上の留意点は以下の通りである。

1

掘削工

掘削後は掘削底面を締固めないよう床付け及び転圧を行わない

・掘削は機械掘削により行い必要に応じて土留め工を施す。
・掘削は必要な大きさとし、余堀りは行わない。
・機械掘削によりバケットのつめなどで掘削の仕上がり面を押しつぶした場合、シャベル、金ブラシなどで表面をはぎ落とす。はぎ落とした土砂は排除する。
・シャベルなどで人力掘削する場合は、側面をはぐように堀り、掘削面が平滑にならないように仕上げる。
・掘削底面の浸透能力を保護するため、足で踏み固めないよう注意する。
※掘削中、当初想定した土質構造と異なる事が判明した場合、速やかに設計者などと協議し、適切な対策をとる。

2

敷砂工

掘削後は掘削底面を保護するため、直ちに砂を敷く

・掘削完了後は掘削底面を保護するため、直ちに砂を敷く。
 (地盤が砂礫、砂の場合は省略可)
・砂の敷均しは人力で行う。
・敷砂は足で軽く締固める程度とし、タンパなどの機械での転圧は行わない。

3

透水シート工(底面、側面)

置換材砕石を全巻きする重ね幅は10cm程度とする。

・地山と浸透面の接する箇所全面に施設する。
・シートの継ぎ目から土砂が侵入しないよう10cm程度重ね合わせ

4

置換材工(基礎部)

安定板(浸透トレンチ管)の下端で転圧する。

・置換材は土砂の混入を防ぐため、シートなどの上に仮置きする事が望ましい。
・投入時に透水シートを引き込まないよう注意する。
・置換材の転圧は、沈下や陥没の防止のためある程度やむを得ないが、回数や方法に十分配慮する。(透水能力や貯留量に影響するため)

5

桝、トレンチ、側溝 布設工

・底板はモルタルなどで密封しない。
・仮蓋をしておき、埋戻し時の土砂の流入を防ぐ。
・浸透桝とトレンチ管の接続箇所の隙間はモルタルで埋める。


トレンチ

・管の継ぎ方は空継ぎとし、管接続の受け口は上流側に向ける。
・水平に接続させる事を標準とする。
・最大延長は管径の120倍以下を標準とする。


側溝

・管の継ぎ方は空継ぎとし、管接続の受け口は上流側に向ける。
・水平に接続させる事を標準とする。
・最大延長は管径の120倍以下を標準とする。

6

置換材工(側部、上部)

置換材の上端まで層状転圧する。

・砕石の充填時に、桝やトレンチ、側溝が動かないようにする。
・透水シートを引き込まないよう慎重に行う。

7

透水シート工(上部)

置換材充填完了後、置換材上面に透水シートを折込む

・置換材工の終了後、埋戻しを行う前に置換材の上面を透水シートで覆う。

8

埋戻し工

置換材充填完了後、置換材上面に透水シートを折込む

・埋戻し土の転圧はタンパなどで、十分に締め固める。
・砕石のかみ合わせなどによる初期沈下が起きる恐れがあるため、埋め戻し後1~2日は注意を要する。
※工事中の排水については原則として浸透施設を使用しない。
※浸透施設施工後に造園工事等で客土・植栽工事を行う場合、客土・芝等が浸透施設に流入することが多いため十分注意する。

維持管理

浸透施設による効果を確保するためには、長期間においても浸透施設の機能が維持されていなければならない。
単位設計浸透量の算定に際して、浸透能力の低下を目詰まり係数で考慮しているが、同係数は維持管理状況に応じて大きな影響を受ける。

また、浸透機能の低下を放置しておくと、機能回復が不可能という事にもなりかねない。よって、浸透機能を長期的に維持するためには、点検および清掃等の維持管理が必要である。
点検及び清掃等の頻度は浸透施設の設置場所により異なるが、1年に1回程度行う事を標準とする。
特に地形的にゴミの溜まりやすい場所では、台風シーズンや雪解け後等に必要に応じて清掃を行う必要がある。

施設 清掃内容
浸透桝・浸透側溝 落ち葉、ゴミの除去、堆積土砂の除去
浸透トレンチ 不要(浸透桝との併用でメンテナンスフリー)

清掃方法としては、手作業の他、ジェット噴射による洗浄やバキューム車による吸引等がある。

目詰まりの発生と回復方法

(『平成9年度 論文報告集 第54号(A)土木学会』より)〔北海道大学・北海道ポラコン㈱共同研究〕

目詰まりの発生

A

長期にわたって徐々に
目詰まりが進行

部材内で目詰まりを
起こしていると考えられる

B

洪水等により比較的短期間で
施設内に泥などが堆積

部材内で目詰まりを
起こしていないと考えられる

メンテナンス方法

①土砂等の排除
(40㎥/min以上のブロア式の吸引車使用)施設内に堆積した泥の圧密が予想されるため、散水の併用により作業が容易となる。
②部材への吸引 ③ジェット噴射等による洗浄 ④ジェット噴射等による洗浄後に吸引

目詰まり発生が Aの場合

①→②→③→④

目詰まり発生が Bの場合

①→②

雨水浸透施設には、雨水に混入した土砂や道路上の塵等が恒常的に流入する。
これにより浸透部分の目詰まりが発生し徐々に浸透能力が低下する。
浸透能力を出来るだけ長く保持するためには、点検および清掃等の適切な維持管理を行う必要がある。
浸透桝 :桝内土砂等を除去する。年1回程度を標準とする。
浸透桝 :ゴミの除去程度の簡易な維持管理

標準的な維持管理の内容

土砂流入少 浸透桝 ごみ取り程度
土砂流入少 浸透トレンチ 維持管理なし(浸透桝との併用でメンテナンスフリー)
土砂流入多 浸透桝 年1回程度、桝内の土砂等を除去する。(ジェット噴射等による洗浄)
土砂流入多 浸透トレンチ 維持管理なし(浸透桝との併用でメンテナンスフリー)

目詰まり

土砂流入少 浸透桝 流入負荷が少なく目詰まりしにくい
土砂流入少 浸透トレンチ 大部分が浸透桝で捕捉されるため目詰まりしにくい
土砂流入多 浸透桝 流入負荷が大きく目詰まりしやすい
土砂流入多 浸透トレンチ 大部分が浸透桝で捕捉されるため目詰まりしにくい

浸透機能を継続的に保持するために、点検および清掃等の適切な維持管理を行う必要がある。
点検及び清掃等の頻度は浸透施設の設置場所等によって異なるが、1年に1回程度行う事を標準とする。

点検

定期点検 :台風シーズン前や雪解け後等に目視により土砂、落ち葉、ゴミ等が溜まっていないか確認